『百年杉』の専門会社 加藤木材

(仮)「江戸時代に生を受けた杉」④入手継続中

『百年杉』の専門会社 加藤木材

150年杉購入は…「引き分け」か…

盟友、畦地(あぜち)秀行くんから電話があって…
「いやぁ、加藤さん、結論から言うと買えなんだったわ。」
「ぜんぶ?」
「いやぁ、2番玉から上…3番、4番、5-番は買うたんやけど…」
「元(もと)か?」
「そうなんや、元(1番)は買えなかったです。」

解説いたしましょう。
丸太の最も太い部分…地表部から
(この丸太だと4m)に伐った部分の丸太が元玉とか1番玉と言います。
その次が2番玉になって
2番玉は、地上4m以上の所から、更に4mで伐られて
その次の3番玉となる地上高8m以上の所からの4mの丸太…という風になります。

このように原木市場って
千差万別な(特に杉は…)丸太を実に細かく仕分け作業をしていまして…
150年生~200年生overのような高価というか
希少価値のある丸太はその木1本が伐られて…5本の丸太になったとして
その5本をそれぞれ1本ずつ別々に市(オークション)にかけたりします。
逆に柱をとるような細い丸太などは
5本とか10本とか…一緒にしてオークションにかけますね。

「高かった?」
「いやぁ、それが高なかったんさ。」
「?」
「ぼくが思うたより安かったんやけど、むつかしいもんで、安うても買えんのさぁ。」
「ふ~ん(はは~ん、なるほどね)。」
「いやぁ勉強になったというか…あぁいうこともあるんさなぁ。」

「まぁしょうがないよ。ところでお客様の予定数にはどうなの?」
「それはこれでおそらくいけるか…天井材の白太がちょい足らんかもって感じやなぁ。」
「了解。それで弊社(うち)の分は?」
「ガハハッ!いやぁ、それそれ、加藤さんの板がまだ無いんさ。」
「なるほどね。じゃぁ延長戦として、もうちょっと江戸時代の杉を探してね。」
「わかりました。」
「じゃぁね。」

まぁ、その全てとまでは言わないが…
おそらく価値観の違いだろうな…

畦地君とぼくは、とにかく「精油分保有量至上主義」!
「杉のあぶら売り!」…だから高樹齢杉しか扱わない。
見た目とかあまり関係ない。
お客様が、数ある杉のうち…ぼくらの杉を身近に置いていただいた際に
最大の効果が期待できるパッケージしかトライしない。

たとえ安価であっても

たいして効果・効能が見込めないような木(杉)は扱いません。

なぜ?…かと問われれば、

精油分が木と我々の関係(恩恵)のほぼ全てだから。

精油はどうやって比較するの?…香りが一番わかりやすい。
同じ高樹齢材でも香りが濃厚な杉はどうやって見分けるの?…
年輪の冬目の力強さ…太さ…
まぁそこらへんは畦地くんの方がぼくより多くのスキルを有している。

それなのになぜ買えなかったのか??

私たちが追及している「精油分保有量至上主義」は
実は一般的な素人受けという観点の見栄えが悪いことも多いのだ。
赤身部の色が濃くて黒かったり…なんというか「気品」がある木ではないのね。

前回の吉永小百合さんとマリリン=モンローの例えがわかりやすい。
モンローは魅力的だけど
気品ある高貴な感じじゃないでしょ。

あのムンムンな色気が嫌な人もいるでしょ。

杉もそうなんですよね。
ムンムンの精油分の見た目が嫌な人って多い。

ところがグレース=ケリーのような高貴な品格があると
ほぼ悪く言う人がいなくなるでしょ。

(古いね どうも…苦笑)

だから、他のブランド製材所のレジェンドさん達やセリ子(オークション担当者)は
その丸太の精油分保有ポテンシャルを理解しつつも
素人受けしない…色気あり過ぎの見た目の
「素人受けしづらい=誰もが良いとは思わない素材」という部分を
減点評価にしたのではないだろうか?

だから、セリ子のスタート時の金額が…
畦地君が思っていたのより、かなり安かった…。

そこで畦地君くんには、おそらく、疑念が沸き上がってきてしまった…。
「そこまでの価値は無い木なのか?何か重大な欠陥を見落としていまいか?」

オークション時に少しでも動揺していては
納得した買い物はできまい。

そして、最も高い値が付く元玉には、彼は声が出なかったのだが
他の人が落札した元玉の価格から算出した…
2番玉以降は、再び落ち着きを取り戻して「買えた」のかもしれません。
まぁ想像ですけどね。

(いくら親しき仲でも、この辺の数秒の中での瞬時のオークション中の判断力やメンタリティに関しましてはヅケヅケと土足では踏み込めませんので…真相はわからないけどね)

何というか、モノを買うのに確かにわざわざ高いモノを買う必要もないのだが…
「安くて良い木」は無いのだ。

まぁ木は適材適所であって
用途ですから、良いも悪いも無いのですが…
木は同じものが無く、個体激しく…
まるで人の「しょう」のように自己啓発活動不可能な領域があるのです。

「素性」というか何というかね…。

だから畦地くんだってレジェンドさん達だって
素材の仕入れに1日を費やして(畦地くんはさらに偵察に半日)現認して
買えたり買えなかったりしているのです。

モノを買うのに
これだけのコストをかけるのって現代社会の人は信じられないでしょうね。
「モノを買うコストなんて、そのモノを売りたい奴にかぶらせりゃいいのさ。」が現代社会。

私と畦地君は新たな価値観を作り出すべく
木(杉)の復権の為に頑張っているつもりだから
こういうケース(まぁあくまでもぼくの推論ですけど…)もあるのでしょうね。

でも丸太の購入は
「納得した価格での購入」というのが実はとても重要に思います。
安ければいいというものではないのですね。

「高い安いではなく… 納得した価格」

安過ぎだと最初から言い訳のネタになっちゃうし、高すぎても当然やりづらい。
「品質と価格のバランスの納得のいく購入」というのがとても重要であって
それがあるからこそ、品質を落とさずに品質至上主義が貫けるのである。

逆に言うと「安けりゃいいのさ」的な考えで
品質至上主義の看板じゃ見え見えの嘘つきでしょ。
ぼくも30歳代~40歳代前半には、そこがわからなかったもん。

そんなこんなで
江戸時代に生を受けた杉とのご縁探しは、今回の収穫は「引き分け」でして
延長戦に入るようである。

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