史上初の【200年杉のお部屋】③

いざ2階へ…

階段の踏板は
私の10年来のパートナーである【百年杉】ではない。

“その他の若い杉”の踏板を十数段登る。
そこを上がりきって
2階の廊下は私の愛してやまない
誰にも負けたことのない品質の【百年杉】の床である。

靴下越しにも
(親しき中にも…で…やはり他の方もいるオープンハウスなので裸足はあり得ない)
【百年杉】のしっとりとした精油分を足裏に感じる。

「あぁ 俺の杉だ。
俺の足裏の鋭敏さは保たれている。階段材の“他の杉”とはまったく違う触感がわかる。」

さぁ、いよいよ覚悟を持って、いざ寝室へ
入る…凄い…ただならぬオーラ…空気…見た目…あぁ…

床を踏む…230年前に…江戸時代の方が植えてくださった杉の床をいよいよ踏む…
踏んでいいのか…でもわたしは踏みにはるばる来たのだ…

(こんな杉床は今までこの世に存在しなかったはずである)

「踏む」…1歩目…床が沈む!…2歩目…やはり床が沈む…
1ミリ…いや2ミリくらいか…
【200年杉】の床は沈むのか?…いやそんなことはあり得ない。

歩き続ける…それでも床は沈む…いや違う…
沈み込んでから戻る…浮き上がる感じ…いやあり得ないそんなことはあり得ない…
同行者はまだ誰も気づいていない…歩き続ける…
【200年杉】の床は変わらずに赤ちゃんを大切に抱くママパパの腕のように…
クッションよく我が足裏をホールドし続ける…
寝室を出る…廊下の【百年杉】の床に出る。

「!」…あぁ駄目だ…あんなに愛した【百年杉】の床が…
まるで60年杉や桧の床のような固さに感じる…
思考が乱れる…
あの、俺と畦地で創り上げてきた最高の【百年杉】の「しっとり感」はどこに?
あぁ…もう訳が分からない…

さっきまで明らかに他社の若い杉である…
階段踏板の杉とは違う安らぎを感じたばかりではないか!

(右が200年杉。左が百年杉。まったく感触が違うのだ!)

 

…ちょっとだけ自分への憎悪が現れる。
10年間愛し続けた【百年杉】…彼女なのに…
もの凄い女性が現れた瞬間…ぼくは10年間の“素晴らしき思い出”をゴミ箱に捨て去って、彼女になんら魅力を感じなくなるような薄情な人間なのであろうか…

それくらいの「違い」
勝負にならない「違い」…圧倒的…樹齢…。

ここまで…。

我に返って同行者にぼくの所感を伝える…

「なんか、しずむ感じがしませんか?」

一同、「うん、たしかに沈んでる感じ」と答える…
おぉマジか?!…鋭敏な足裏の俺じゃなくても感じるレベルなのか??
(確かに同行者は友人だから皆、五感は優れているのだが…ショック!!)

実は今回は、英国紳士も同行者にいる…
彼は幼少の頃より屋内でも靴を履いていたのだから、わからないかもしれない…
(やはり設計士さんや施工者よりも加藤の杉を使うと最初に決めていただいた
ありがたい現在進行形のクライアントさまなのです)

「わたしにも、しずんでるのがわかりますね~」

!!マジかよ?…

「廊下の【百年杉】は固く感じます~」

追い打ち!…傷口に塩か…

【百年杉】と【200年杉】…違いが感じられなければ大げさに言えば引退も考えたのだが…
逆に!こんなに差があるなんて?!…にて
困ってしまったのだ。

(つづく)