『百年杉』の専門会社 加藤木材

百年杉と地域材(集中連載19)

『百年杉』の専門会社 加藤木材

地産地消は素晴らしい考え方ですし

私も大賛成の考え方なのですが

こと「木材の地産地消」が都道府県産材の振興であるのなら

その考え方の根拠には

「杉はどこのだって同じでしょ。

同じなんだから近くの杉を使ってよ。」的な考えがあるように思います。

 

弊社が三ツ星★★★のお寿司屋さんであったとします。

品質至上主義にて寿司ネタを入手すべく頑張ると思います。

 

たとえ大間のマグロでも、その日のマグロは脂の乗りがイマイチであったのなら

壱岐のマグロを入手するとか…

品質至上主義にて最大限の努力をすると思います。

 

けれども最初から相模湾のマグロ限定では

「品質至上主義」にはなりません。

 

ピンキリと言ったら

語弊がありますが(適材適所です)

杉ほど個体差が激しい樹種もございません。

 

和食の考えの根底にある、素材選びで全ては決まるという…あの考え方です。旬のモノを選ぶ。上旬・中旬・下旬×12か月=36の旬…そこで勝負は決まる。欧米人の「素材はたいしたことでは無い!人間の英知によって息吹が吹き込まれるのだ!」という考え方とは対照的です。

 

ご存じない方も多いのですが

百年杉は偶然100年経過した杉ではなく

樹齢100年の杉を創りにいって産出させているのです。

 

成長の遅い遺伝子を有しているであろう苗木を創り

実生の杉=自生の杉のような状態を人工的に再現。

全国平均ではha/4,000本~6,000本がスタンダードな植林本数だと思われますが

ha/8,000本。…更には10,000本…場所によっては12,000本もの超密植にて植林し

太陽光線を満足に得られない実生の杉の状態を人工的に作り出し

成長の遅い=精油分豊富な濃厚な香りの杉を“狙って”創り出しています。

 

こういった「百年杉」ばかりを年間を通じて

入手していく事を考えた場合、

関東近県で考えますと、なかなか難しい。

 

埼玉県でも千葉県でも

そういう素晴らしい杉はあるのですけれども

量が少ない。

量が少ないと品質の安定性に欠けて「あたりはずれ」が多くなります。

 

栃木県・茨城県・静岡県あたりだと

もうちょっと量もあるので、安定した入手は可能なのですが

「質」の面で弊社としては…私としては物足らない。

 

これらの地域の杉は

品の良い…実にグッドルッキングな…

上品な「木あじ」なのだけれど

私はもっと…むせかえるような…「あぶらぎっしゅ」な…精油分を求めています。

 

大変、乱暴で品のない例えで申し訳ないのですが

古くは…

吉永小百合…司葉子…

最近なら

堀北真希…桐谷美玲のような品のある

高貴な美しさのような杉ではなく

 

古くは

マリリン・モンロー…青江美奈…

最近なら

杉本彩であろうか…

 

もうあきれるくらいの色気…精油分…芳香の杉を求めているのです。

(私の女性の好みではなく、あくまでもたとえ話です 笑顔)

そしてそれは、その精油分こそが、我々の身近にあっての

たくさんの恩恵の源だと確信しているからにほかなりません。

 

(丸ノコの刃先にこびりついた茶色い「百年杉」の精油分)
(丸ノコの刃先にこびりついた茶色い「百年杉」の精油分)

 

 

 

 

 

精油分豊富な杉は産地というより

森林所有者の考え方が大きいと思います。

 

日本中に「素晴らしい百年杉」はあるのですが

記述に残る範囲でも、日本最古の植林文化も持つ紀伊半島の杉は

最も高価に評価されるブランド産地ですので

 

他の産地の森林所有者としても

せっかく紀伊半島の杉と同等の品質の百年杉を創っても

ブランド杉と比較して「買い叩かれて」しまうケースが多いでしょうから

 

「それならいっそ、紀伊半島の製材所に丸太のままで価値ある価格で買ってもらった方がいいじゃん。」

 

とばかりに

実際に全国の「素晴らしい高樹齢の杉」の多くは紀伊半島に集まります。

紀伊半島周辺の製材所さんが買うのです。

 

そうなりますと

いわゆる各所の都道県産材の地域材とは

高樹齢のTop of topの横綱材抜きのラインナップとなっていますから

(横綱級の丸太は紀伊半島に買われていく…)

やはり私には物足らなくなります。

 

産地の特徴もあります。

湿潤な森の恵みである杉材の生育条件としての

降雨量や年間湿度などを考えますと

おおざっぱに考えれば

紀伊半島+高知県あたりが

杉の生育には適した気候にはなるのでしょうが

 

静岡県の杉の精油分に

「むせかえるような精油分」を感じることがあまりないのは

重要な顧客に東京が含まれていることも大きいように思います。

 

関西方面の方々のモノのとらえ方として…

良質な素材が…たとえイニシャルコストを押し上げる事になっても…高額になっても…

ランニングコストを考えればトータルで安価になるという考えがありますが

 

関東になりますと高けりゃ売れない…

そこまでのクオリティを求めていない…という

イニシャルコストを下げることによっての競争力強化を重視しますからね。

最高のモノはいらない…という関東の考え方。

 

重要な顧客が「横綱」級はいらないと言っているのですから

お客様のニーズに応えるべく森づくり…杉づくりをしていく事は当然ですので

静岡県の杉をみていると

 

「やればもっと凄い杉は創れるんだけど、そこまでのクオリティはいらないって言われているから、このくらいにしてるんだよ。」って顔をしているようにも見えます。

 

「メルセデスまではいらないんだよ。クラウンでいいの。いやクラウンがいいの。」という感じ。

 

東北地方の杉は豊富な落葉広葉樹林帯だった森の影響からか

肥沃な土の影響からか

成長が早く=精油分の少ない印象がありますが

 

ご縁をいただきまして宮城県松島の瑞巌寺さま所有の

樹齢150年の杉の加工をさせていただいた事があるのですが

物凄い精油分と芳香でした。

 

あの辺りは雪も少なく

海があって年間湿度もある程度高いのでしょうから

今後は、杉だらけの東北地方の中の

ブランド地域となるポテンシャルを秘めているようにも思います。

実際に材も静岡あたりの杉に似ていますしね。

たとえ話に挙げた吉永小百合さんのような美しさがあります。

 

 

現在の我々の建築業界では

前述の三ツ星お寿司屋さんのような

「素材選び」や「品質重視」の木材のセレクトをして

家を建てることはほぼ不可能になっています。

皆、「うちは●●材(地域材)を使います」という感じ。

 

「食」であれば翌日また違うモノを食べればいいのでしょうが

「住」は一度建てれば数十年~百年と替えがきかないのにね…。

 

「君の目利きを信頼している。この部屋だけだが、この部屋だけは

最高に香る杉を集めてきてくれ!それを使ってくれ!

全部じゃなくて申し訳ないが頼む!!」

 

そんな状況は今や皆無でしょうから

木の「目利き」は不要でしょうから

私のような人間は絶えていくでしょう。

 

今はgoodなストーリーさえあればいい。

素材チョイスの目など不要なのだ。

 

長きに渡って育まれてきた…

木の国にっぽんの最高の木(杉)がその評価を得られませんから

結果、最高品質の木(杉)を誰も創らなくなっていくでしょうね。

おそらく日本中でそうなっていきます。

 

残念な事です。そこそこな木(杉)しかなくなっていきます。

木の国なのにね。

 

 

世界では、ほとんど木は植えられていなくて

 

国土の67%を占める森林の我が国ですが

国土はそんなに広くないから

我が国の森林面積は全世界の森林面積の0.6%に過ぎません。

 

けれども先人が命がけで植えてくださった

「山の畑たる」人工林は

国土の全森林の41%になっていて

生物多様性の生態系や保水の面でも確かにこれはやり過ぎなのですが

世界の人工林の割合では我が国人工林は10%にもなるのです!(驚)

 

いかに世界では木が植えられていないのかが

おわかりいただけるでしょうか。

 

そんな世界一「木を植える民」の我々なのに…

最高に人間に恩恵のある木(杉)づくりは絶えていくのでしょうね。

最高の杉が最高の評価を受けないのであれば

最高の杉を誰も創っていかなくなります。

 

残り少ない「木の目利き」が存在しても

木を換金素材としか見ないような

森の恵みに対してリスペクトが足りないような

モラルに問題のあるプロが多かったり

 

素晴らしいモラルをお持ちの

「木(杉)の素晴らしさ」を発信されている方が

「木(杉)の目利き」でないばっかりに

「品質第一主義」になれないですし

モラルに劣る「木のプロ」にやられちゃっていたり…

 

現状の我が国の木のストーリーは

ちょっと…だいぶ…いびつな感じがします。

 

天然林の杉と違って

「山の畑」の中で創られた精油分豊富な「百年杉」は、偶然生まれた杉ではなく

狙って創られた素晴らしい杉であり

その杉を生み出したのは

技術であり世代間で継承されきた情熱なのです。

 

林業の技術であり

技術の継承であり

世代をまたいだ情熱のリレーでもあるのです。

(百年前に植えた方は天に召されています)

 

弊社は、「品質第一主義」にこだわって

「もっと品質に劣る…香りが薄くていいから安い杉をくれ」のような要望に対しては

 

「他をあたってください。」とばかりに

「品質至上主義」を貫いて

「最高の杉だからこそ到達(経験)できる恩恵」を探求して参ります。

 

これはこれでビジネスとしては

とっても辛いのですが

ご支援いただければありがたく存じます。

 

 

 

有限会社 加藤木材
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