ちょと早いけど、もうそろそろ時効だろうから書きますかね。
休みの日にTVをつけたら、有名なリフォームTV番組が写ってました。
ぼくはこの番組は見ない主義なのだが…
ちょうど「感動のシーン」らしく
桧の壁板が写っていまして…お母さんに桧の壁板の「桧風呂」をサプライズで…というシーンでした。
「あぁ、1年もしないうちにカビて黒くなっちゃうのにねぇ…」
「木の力」がありますよね。
杉だと抜群の耐水性とかね。
日本書紀には杉で船造れって書いてあるもんね。
でもね。それらの木の力…適材適所って「赤身」だけの話なんです。
白太は「魔法」を持っていない。「木の力」を宿していないのです。
耐水性だけだと5段階評価で杉が5。桧は4くらいだろうか…
でもそれって「赤身」の話なんです。
丸太の外側の白太部は「木の力」はノーチャンス。
例えば「シロアリに強い」という青森ヒバだってぜんぜん食われ放題。
杉だって桧だって「赤身」はカビづらい。
白いうぶ毛のような手で拭って終わりのカビは生えても、黒いカビはほぼ生えない。
でも白太はすぐにカビちゃう。それだけでなく耐水性も劣りますからね。
もはやこの国では、木のちゃんとした使い方なんてできないのですよ。
ぼくはまったく同じようなケースを実際に見たことがあります。
しかもその際の設計士さんは
有名な本も出されている…本も売れ続けている方でした。
話を戻して
壁板に節があれば、それが根けてこないように
あらかじめ開口して、別の節で埋める「埋め木」処理をしますよね。
でもお風呂じゃ、接着剤の耐久性に問題があるからやはり節の無い板を使いたい。
でも私の記憶では…
桧の赤身部限定の節の無い(=無節)の床や壁板って、レギュラーでは無いのではないでしょうか?
特注品になるように思います。
更にそれをとるために100枚の1枚なのか?10万枚の1枚なのか?によって
価格が変わるどころか…受注できるような林産地だって2~3か所しかないのではないでしょうか。
以降は私の想像ですが
「匠」の先生はこの「赤身にのみ魔法が宿る」話を知らなかったのでしょうね。
そして施工会社の工務店も知らない。
この両者が「知らない」のでは、
施主はしょうがありません。
知っていた可能性があるのは
取り付け施工をした大工さんだろうけど…それも半々かな。
知らなかった可能性は50%
知ってたけど…「ここでそんなこと言って、工事がストップしたら、次の現場に行く予定に変更が生じて、俺は自分で自分が損する事を、しかも無給でやることになる。俺はこの壁板を適切な施工をすればいいだけなんだから黙ってよ。」が50%。
この工務店さんが、この桧の板を買った
材木屋?さんも、やはり「知らない」のか「不誠実」なのかのどちらかだろう…
【内訳書】に【風呂 壁板 桧】と書いてあっても「知らなかった」のか?
【壁板 桧】とだけ書いてあって、用途が不明確であったのに…「これはどこで使うの?」と問わなかったのか?…
もしくはネットで買ったのかもね。
いずれにせよ「木のプロ」が役に立ってないのは確かかな。
ね。最適化と効率化のなれのはての現代は、もう「木」なんて使えないのですよ。
同じようなケースで
もちろん杉だったんだけど
ぼくは設計士さんにその知識と情報を伝えて
価格的にキビシイという回答だったので
壁板製造メーカーに、弊社にある耐水性のある木工用ボンドのような接着剤を三重県まで送って
その物件の「埋め木」だけは接着剤を使ってもらうように工場にお願いして
「お施主」さまにも、このコスト内での、最大限の努力にご理解いただいて、経年変化に関してのクレームを防止して
我ながら私の「知識とおせっかい」、皆がによって皆一定の望むべく地点に到達したお仕事をさせていただいた事が2年くらい前にあります。
そういう「プロとしてのおせっかい」なんて
誰もやらないでしょ。ぼくはもう頑固ジジイだもん。
自分に責任がないのが明確であれば
おせっかいをしちゃうと、
タダで任務が増えるだけでしょ。…だから皆「黙ってる」
もしくは
おせっかいをやく知識が無い。
この国はもう…とっくに木なんて、ましてや杉なんて使えないのである。
設計でもなく、施工でもなく…
「俺の百年杉」を買ってくれる方にだけ、遠隔地であっても「木のプロ」としてサポートするような
手段でも考えなきゃならないのかなぁ…とTVを観て思った次第である。
悪いのは桧の白太じゃありませんよ。
いつだって悪いのは、ぼくら人間なのだ。