頭がグルんグルん回って動揺している頃に
私の【百年杉】パートナーの畦地秀行くんが遅参して登場…
床を踏んで
「あぁ!…」やはり絶句…。
「加藤さん、おれらなんで樹齢にこだわってたのに、最高の…こういう杉を10年もやらんかったんやろな。
(そりゃ建築業界からの安くてマシな杉よこせ!…の要求の流れに歯向かってきたけど…
ここまで違うとはなぁ…おれもそう思うよ…今はマジで…)
「お前だって、和室が杉の“見せ場”って言ってたじゃん!
どうだよ?この洋室の【200年杉】の天井・壁・床の6面体が【凄ぇ杉】って…
「いやぁ、やられましたわ。ぼくの家の和室は樹齢200年って言いましたよね…
でもこの部屋の方が凄い。(そりゃそーだわ、良いお友達と一緒にいると私たちも伸びるもん。
お友達の質と量というと語弊があるけど、和室より洋室の方が圧倒的に杉の量が多いもん。質の話はもういいですよね)
でもよう…俺たち
お客様への大切な【200年杉】を加工して養生して梱包して…
大事に傷つかないように扱ってきたからさぁ…
「踏まない」じゃん。特に最も高価な【200年杉】じゃん!
ぜってぇー!踏まないよな!!
(黙ってうなずく畦地さん)
でもさぁ…木って杉って…「踏んで」なんぼだな。
(黙ってうなずく畦地さん)
踏むべき場所のモノは踏まなきゃわからんのよ。たぶん…。
(黙ってうなずく畦地さん)
ヒトとおんなじ。口だけじゃダメ。現場で使えてなんぼ。
参ったな。今回は…。

「正確にいうと樹齢180年から230年の丸太8本でこの部屋はできています。産地は尾鷲の隣町あたり…先日の尾鷲イベントでお越しいただいた際の皆伐風景をみていただいた…あの林業家の方の杉です。加藤さんのいつも言ってる…多湿の杉…乾いた森の吉永小百合みたいな上品なピンク色の赤身の杉じゃなく、マリリンモンローのような油分…色気の杉をよこせ!っていう杉だけでこの部屋はいけました。いやぁ勉強になりました。ありがとうございました。」
そう言って…嵐のように多忙な畦地秀行さんは帰っていきました。
う~ん。
まずひとつ自己肯定にちょっと難のある
ぼくの立て直し…【百年杉】との「愛」の再構築?
それとホンモノ…超一流を知ることの大切さ…

たぶん「凄い寿司屋さん」は
過去に「凄いホンモノのお寿司屋」でお寿司をいただいた感動と衝撃があったから
三ツ星とかそうなったんでしょ。
やはり本物の超一流のアスリートを見て
少年少女はやがて超一流のアスリートになる。
そう考えると…
木が無垢が…日本の木が…杉が素晴らしい…と言いつつも
今回のような「very of bestの木(杉)」を経験せずにいる方ってどうなんだろう。
(もちろん、ちょっと前までの私と畦地さんもそうです!)
脂が乗ったクロマグロの大トロも食したことが無いのに、寿司屋をやってる人間みたいなものか…
参ったな。
それじゃいつまでたっても木の杉の価値は上がらないはずである。

もちろん私は何でも最高の杉にせよ!…と言ってるわけではありません。
ただ最高の品質を知ってから…
横綱を知ってから…「我が家の床は関脇にしておこう…」とか
そうすることによって
品質…目利き…様々なスキルアップにつながっていくのだと思うのです。
さらには…
ナンバーワンではなくオンリーワンを目指している方々…
美術…スポーツ…芸術…福祉…平和…平等…音楽…
すべての…そういった方々は
一度きりの人生…200年杉を踏んでおいた方がよい。
こういう素晴らしさ…森の恵みのありがたさの為には200年の歳月がかかるということ…
時間はお金じゃ買えないということを認識して
人間のおごりを認識し…更には森とのお付き合いを考え直すには
まったく良い機会なのです。
そして我々の皮膚…特に足裏の鋭敏さは
靴下越しにも杉の精油分の量がわかる能力を持っているのだ。
われわれが赤ん坊を抱く際の慎重さ…ケアフルさと同じような
赤ちゃんへの愛情の差異のようなモノを足裏は精油分として認識できるのだ。
そんな能力を持っているのに
ビニルの不快な床でハイハイでは
その能力は発揮できまい。
「踏めば人生が変わる床」…
それが岡山にはある。
(この項 おわり)