先日、あるエコイベントにて長野の桧を中心とした木工の会社の方にお会いする機会がございました。
以前からリスペクトしていたので、その会社の専務さんと隣どうしのブースでしたので
色々話せてよかったです。
「実はうちの社長は、今の若い子は木の香を嗅ぐ機会が無いから
”桧の香り”を薬臭いと感じる人が多いって危機感を感じています。お世話になっているS大学の先生もゼミ学生にそういう子が増えているようなことをおっしゃっているんです。」
なるほど…桧の本場!の長野の木工屋さんとしては
居ても立っても居られないような…気をもむお話ですね。とお答えしながら
専務さんには、ぼくの考えを述べさせていただきました。

桧の香りはやる気になるというか…覚醒作用があります。
しかし常に神経系が過緊張状態にあるような現代社会においては
これ以上の「覚醒」は勘弁してほしいから…いいかげんもうちょっと休みたい時に休ませてもらいたいから…
”桧の香”を遠ざけようとしているのではないのでしょうか。
(特に”五感”がまだ正常に近い…若い子は…)
現代社会においては
私たちはありとあらゆる刺激(プレッシャー)にさらされています。
放射性物質をはじめとする多くの化学物質。
白色LEDの光害…。
効率化・最適化のマニュアル管理社会…まぁ記せばキリがないけど…
そして「不快な触感」。
胎内でのママの人肌を「安全の触感」と記憶している私たちは
通電性…透湿性のある柔らかく温かい素材を好適ととらえますが
そういった素材は土と紙と木…木というより杉…杉というより【百年杉】くらいなのですが
それらに触れる機会がほとんどなく
タッチパネルやキーボードばかりに触れているわたしたち現代人は
おそらく皮膚が脳や神経系に対して
「不快→安全な触感ではない→警戒注意報」を発令し続けているのでしょうから
注意報アラームが鳴りっぱなしのような
過緊張状態の継続でしょうからね。
常にチクチクと刺激を刺されているような状態ですから
もう本能的に、さらなる「覚醒」を嫌がることは想像できると思います。

私は上記の理由により、”桧の香”の人気は
これからも長期低落傾向になると考えています。
赤ちゃんや幼児には受け入れられるかもしれませんが
それ以降はキビシイ状況になるのでは…。
(経験としても…充電中の子は桧の香を嫌がる子が多い気がしますしね)
でも毎日毎日【百年杉】に囲まれて仕事をしている
私を含めた弊社スタッフはみなたまに加工した際の…
【百年桧】の香りが大好きでして…皆、寄ってきます(笑顔)。
やはりこの世は
陰と陽
太陽と月
光と影
交感神経と副交感神経…で成り立っているわけでして
この国の人間が数千年間そうであったように
杉がスペシャルスタンダードとして
身近に当たり前にあることによって
休息…鎮静…安眠…安らぎ…を得られる状況が継続するからこそ
覚醒…がんばり…努力…への応援である「桧の香」も
心地良く感じることができると思うのであります。
呼吸も「はく」から「吸える」わけでしょ。
やはり先に「鎮静」があるからこそ「覚醒」でがんばれるわけでして
この国の木材は…杉の価値が見直されない限り、桧も売れないのです。