大栗様邸(東京都)リフィーム内容
- 床:既存コルクタイルのまま
- 壁:腰壁;『尾鷲香杉』壁板/源平・枝目
和紙クロス(素材工房)
一部北側の部屋の外部壁面;『尾鷲香杉』特注 厚み30㎜/源平・板目、横貼り - 天井:和紙クロス(素材工房)
- トイレ内:床・壁・天井全て『尾鷲香杉』/赤芯 枝目
- 二重サッシ:『尾鷲香杉』製サッシ(ペアガラス10㎜)
座談会の参加者
大栗様(お施主様)

畦地秀行(畦地製材所)

加藤政実(有限会社加藤木材)

- 加藤
- こんにちは。1月~2月の冬の時期にリフォーム工事をさせて頂きました。
その節は大変お世話になりました。その後はいかがでしょうか?
- お客様
- 半年が過ぎて、今は暑い日もある時期ですが、リフォーム工事終了後はほとんど無暖房でも大丈夫な温かさでした。
- 加藤
- マンションで、暖房無しでいけましたか?
- お客様
- 息子は北側の部屋で、寒かったので電気ストーブを使ってたのですが、今シーズンは使いませんでした。 同じく北側の部屋の主人もホットカーペットと暖房をつけるのですが、使用頻度は明らかに少なかったです。 クーラーも今のところ点検のためにスイッチを入れたぐらいです。
- お客様
- [娘さん]兄が暖房を使わなかったので、毎年落ちていたブレーカーが落ちなかった(笑)。
- 加藤
- そうでしたか。ブレーカーが物語っていますが、それだけ電気を使わない冬だったはずですよね。 イニシャルコストとしてはリフォーム費用がかかりますが、リフォーム以降電気代が少なくてすむ。 しかもそれはずーっと続くというのはイイですよね。 大栗様のリフォーム工事は、基本的には素材を変えただけでこれだけ温かくなったという事例です。 「工法」の話ばかり強調される事の多い日本の建築ですが、もっと素材による恩恵に関して語られていいと思うんですよね。
- お客様
- 施工後に驚いたのはとにかく室温の変化です。 同じマンションに住む方が玄関に入ったとたんあったかい!って言います。
- 加藤
- 木は熱伝導率が低いんです。そして、特に杉は温かい。 ここで使用した低温乾燥材『尾鷲香杉(おわせこうすぎ)』は、極めて乾燥しづらい杉の精油分をそのままに、 水分だけを取り除く事が可能になった素晴らしい材料なのです。 普通に流通している高温乾燥材より温かいし、豊かな芳香があるんです。 以前はそんなに寒かったんですか?
- お客様
- 特に玄関あたりなんかは、とても寒かったです。
- 加藤
- 以前の玄関はコンクリート直にビニールクロスでした。 吸気口の周りは空気が動くので大丈夫でしたが、そこを少し離れたあたりから結露によるカビだらけでした。 それをコンクリートに直接スギを貼る事によって、結露する前にスギが吸収してくれるという発想の工事を施しました。
- お客様
- 下駄箱の扉も鉄製からスギの建具にして、触っても冷たくないんです。
- 加藤
- 鉄はスギの750倍も熱伝導率が高いですからね。触ると冷たいですよね。 だから鉄がお部屋にあるだけでその鉄の冷えがお部屋の空気をもっと冷たくするんですね。 あと、「木」と一口に言っても、この『尾鷲香杉』はとっても温かいけど、ナラやタモ・サクラなどもっと堅い木だと、鉄よりはましだけどもっと冷たいんです。桧だってもっと冷たい。
- お客様
- やはりこの内側の窓を設けてから、北側の部屋は全然結露しなくなりましたから、 窓ひとつでこれだけ変わるんですね。
- 加藤
- 開口部で温熱環境は大きく変わります。まずサッシに使われているアルミはスギの2,500倍の熱伝導率です。 それだけ外側の冷えや熱さを伝えやすいんです。だから素材の特性を考えると本来アルミはサッシに不向きなんです。 そこで内側にもう1セットの、木の中でもとりわけ熱伝導率が低いスギの木製サッシを設けました。ガラスはペアガラスです。
- お客様
- このマンションでも北側の部屋は寒いため、子供がいなくなったら物置きになってるという方が多いんです。 かといって暖房をつけると結露してしまいます。
木製(スギ)二重サッシと壁面スギ板貼り



- 加藤
- そうですね。大栗様のところは北側の壁面に杉板張り工事をさせて頂きましたが、 それをしなくても効果は大きかったと思われます。工事以降の計測結果では、室温が外気温より10℃高かった状態でも 結露は認められませんでした。そして結露するとすれば、以前からあるアルミサッシのアルミ部分なんですが、 ここに露が結ばれたら、外のアルミサッシを解放して、スギのサッシを閉めれば、露はすぐに消えて乾く筈です。 杉サッシの二重ガラス(ペアガラス)が威力を発揮しているのはもちろんですが、 アルミサッシと杉サッシの間に空気層があるこのシステム自体が二重ガラス(ペアガラス)構造なんです。
- お客様
- 壁の板も上下は開いていて、万が一結露した場合空気が通るようになっていて安心です。
- 加藤
- 揮発性化学物質の恐れのある内側の各種断熱材を使用せずに、結露防止や断熱の施工をするとこういう形になりました。 この辺はご監修頂いた設計士の相根昭典さんのお知恵とご経験が大きいです。従来はこういう建具にスギは不向きだとされていました。 曲がる反る!などからです。スギを建具に使用するとなると樹齢150年くらいの大木の柾目の板じゃないと使えない!とされてきたんです。 それがこの低温乾燥装置を使用する事によって、その半分の樹齢70~80年くらいのスギの木の板目で製作可能になりました。 大栗さんのお宅で使用させて頂いたスギは、全てその新しい技術の低温乾燥杉材である『尾鷲香杉』です。 とにかく曲がりづらく、高温乾燥のスギよりちょっと温かくて堅いんです。ポイントは精油分なんです。とにかく精油分豊富なスギは温かいんです。

- お客様
- 木と和紙と・・・。紙ももとは木だし、とっても暖かいわけですよね。
- 加藤
- よく接着剤の臭いなど気になさる方は多いんですが、皆さん何でビニル自体の匂いが気にならないんだろう? って僕はよく思うんですよ。
- お客様
- 貼ってる職人さんに聞いたら、ここで和紙クロスを貼っていると、日々ビニルの匂いを吸っているって実感する。 っておっしゃってました。木の中とビニルの中でどちらが健康か?は誰でもわかりますよね。
- 加藤
- そうですね。総桧(そうひのき)造りとか言っても、 平気でビニルクロスの匂いの中で暮らす家がある国なんですよね。我が国は。
- お客様
- 総スギ造りにすればいいのに(笑)。
- 加藤
- (笑)確かに紙のクロスは温かいんですが、なかでも和紙は抜群に温かいんですよね。
- お客様
- 職人さんが昔は接着剤で手がボロボロになってたっておっしゃってました。

- 加藤
- それでは、そのクロス職人さんが「森林浴をお借りします」と言ってたトイレを拝見致します。 おぉ!相変わらず凄い(スギの)香りですね!
- 畦地氏
- これは凄いですね。木箱のような感じが無くて丸みを感じます。

- お客様
- トイレはあえて換気扇を回さずに杉の匂いがこもるようにしています。
- 加藤
- 『尾鷲香杉』の香りをタダでよそに流すのはもったいないですもんね(笑)。
- お客様
- 開けたとたんに電球がまぶしかったので、軽く覆って間接照明にして頂きました。
- 加藤
- 光害っていうのを、去年あたりから環境省もようやく言うようになってきましたが、 部屋の中がどこもコウコウと明るいのは我が国だけです。トイレは、人間の生理的に極めて重要な行為のための場所です。 そこがコウコウと明るくてビニルの匂いっていうのは、異常な気がします。
- 畦地氏
- なるほど。
- 加藤
- 木はちょっと暗めの方が見栄えがいい気がします。 ほら、夏祭りの夜の浴衣姿のクラスの女の子が、いつもよりきれいに見えたりした事があったでしょ。
- 畦地氏
- (笑)! あった、あった。

- 加藤
- このスギの香りが自律神経と脳に直接作用して、鎮静リラックス効果があると森林総合研究所が発表してくれましたが、 特にこの尾鷲香杉の香りはとにかく凄いです。これらの木で樹齢80年くらいでしょ。
- 畦地氏
- そうですね。
- 加藤
- 樹齢150年くらいの銘木級のスギの香りが、なぜか80年なのにしますからね。 『尾鷲香杉』(=低温乾燥杉材)は。まったく今までの常識を破る品質と香りです。 その理由は、何度も言いますが精油分なんです。「手あか」のつきづらい、僕らの指先より油脂分のあるスギ。 ここしばらく見る事ができなかったスギです。 ご存じない方が多いんですが、木が材木になる過程で、その品質を決定づけるのは9割方「乾燥方法」で決まります。 「乾燥数値」ではなく、その数値になるまでに何をしたのか? という「乾燥方法」で、ほとんど決まるんです。料理と同じです。 ダメな調理方法でビタミンを流出させたり、味がまずくなったりするでしょ。それと同じ。木材は「乾燥方法」で決まります。 杉の全能力を開花させる乾燥装置が低温乾燥プラントですね。
- 畦地氏
- ありがとうございます。
- お客様
- [娘さん]でも匂いは今は全然わかりません。トイレでも感じません。
- 加藤
- そうですね。僕も最初はこの杉を加工してると、工場中がいい香りにつつまれて・・・って思ってたんですが、 最近は慣れちゃって感じません(笑)。
- お客様
- [娘さん]ゴールデンウイークで出かけて帰ってきた時には感じました。
- 畦地氏
- 今お部屋がこれだけスギの甘い香りなのに、プロの僕らがそれを感じて、お客様が慣れて感じないなんておもしろいですね。
- お客様
- 身体にいいでしょうというのは、なかなか実感もできないし、証明する事もできないものです。
- 加藤
- おっしゃる通りです。健康な時に健康を実感する事はなかなかできないんですよね。
- お客様
- そうなんです。ですが真冬の時期の室内の温かさや外気と10℃も違っても結露しないとか、 やってみて証明できた事は生かしていただければありがたいです。もちろん、お陰さまを持ちまして家族全員健康ですが、 それがこのスギの恩恵が大きいということをPRして頂いて、スギがもっと使われて山が豊かになって頂ければ幸いです。 冬は快適だったので、真夏が楽しみです(笑)。
- 加藤
- ありがとうございます。
- お客様
- これだけきれいな木目に囲まれてるっていいもんなんです。こんな小さな節にも木目が年輪があるんです。 一寸の虫にも五分の魂じゃありませんが、とても謙虚な気持ちを得られます。主人は、こんな板張って、これ何年もつんだ。 って言ったので、このマンションの寿命より長いんだ。私達の命より長いし、持たせようと思えば孫の時代まで持つんだよ。 建て替えるんならはがして持って行ってまた貼れるんだから。と言ったら何も言わなくなりました(笑)。
- 加藤
- 木に対してそういうお気持ちを持って頂ければほんとに、施工者冥利、材木人冥利に尽きます。 木は屋内で使用するぶんには半永久的に使えますからね。
- お客様
- 傷だらけになったら削ればいいんだし、削ったらまたイイ匂いがしてきて、またもっと健康になって、ねぇ(笑顔)。
- 加藤
- そうですね(笑顔)。今日はありがとうございました。
- お客様
- また真夏が過ぎたら来てください。
- 畦地氏
- ぜひそうさせてください。本当にありがとうございます。