『百年杉 13年間の探求』
(6)未来を決めるのは、室内の空気の質
安心して呼吸できる空気とは?
これまで「百年杉13年間の探求」の2〜4では、外の排気ガスや屋内の微弱な揮発性化学物質に対して皮膚と脳が本気で真剣なリアクションをみせていることを書きました。
そして「百年杉13年間の探求」の5では、呼吸の機能について触れ、「代謝性呼吸を減らす=呼吸が浅くなる」のは毒を体内に入れないためだと理解を深めました。
こうして俯瞰すると、皮膚も脳も、周辺の空気の質には常に気を配りしていて、気配りしすぎて怯えているようにすら思えてきます。
酸素はたくさんあればいいというわけではありませんが、適量が必要であり、なければ生きていけません。
そしてとりわけ脳は、「酸素食い」の大食漢です。燃費の悪い高性能マシンのような器官です。
「代謝性呼吸」の量が慢性的に少なくなると、脳の成長と維持に影響を与えるのも無理はありません。
子どもの体重当たりの呼吸量が大人の2倍なのは、脳の成長期であるからにほかなりません。子ども時代とは、大量の酸素が必要な時期なのです。
私、加藤政実は、ここに、化学物質が過多になった「住まい」の負の影響の本筋があると考えるに至っています。
もちろん、人工的な化学物質による直接の悪影響もあるでしょうが、睡眠時を含む、慢性的に代謝性呼吸の浅い状態が続くことによって、あらゆる分野の能力がフルパワーで発揮できずに弊害が生じる。そう思えてなりません。
皮膚や脳が危険を感じて身構えてしまうような空気にさらされ、吸引する酸素量が不足してしまうことで、本来持って生まれた素質の開花や維持が困難になりはしないだろうか。強く危惧しています。
毒まんじゅうより怖いのは毒ガス
空気とは別に、口から摂取するものとして、物を食べてわたしたちは生きています。
この経口ルートでは、腐った物や毒性物質を飲食する可能性があることを身体はしっかり想定していて、口から入れた物は9割排せつ可能な仕組みになっています。
「吐き気」とか、幼児が「苦味」を嫌って吐き出すとか、とにかく七重八重のセーフティネット装置が満載されています。肝臓という門番の存在も大きいのですが、まさに万全。備えあれば憂いなし。
それに対して気道ルートによって呼吸して入ってくる空気に対しては、一定の異物除去のような役割が肺にあるものの、それ以外は門番も障壁もありません。
体内に吸引された空気中の酸素は、あっ!という間に全身を駆け巡り、脳~心臓といった実に重要な部位に取り込まれていきます。
わたしたちの血管の全長は10万キロ。距離にすれば地球2周半もの長さになりますが、酸素を運びながら血液が全身を一回りする時間は、なんとわずか1分なのです!
驚くべきスピードです。
この国でいまだに続くペットの殺処分にも、かつて人種差別によるアウシュビッツの殺戮にも、毒ガスが使用されています。この星の哺乳類を最も効率的に殺すには、毒まんじゅうよりも毒ガスが有効なのです。
考えてみれば、この星の生き物のすべては33億年もの間、大気中の毒ガスが無くなることを海中でじっと待ち続けてきた生き物の末裔(まつえい)です。
待ち続けた結果、空気中の毒性物質に対してほぼ無防備になり、体毛を消失させ、皮膚を高性能に進化させてきたがヒトなのです。感覚器としての皮膚の精度を上げ、空気中の細かい物質の質量さえも探知するようにして、生き残る確率を上げる進化を続けてきたのです。
そして、だからこそ実に鋭敏なリアクションが起きるのかもしれません。
「いびきやおねしょ」に関するお声も、薬理的に徐々によくなっていうような感じではなく、すぐにその日から、という感じ。実にクイックなリアクションなのです。
副鼻腔炎の消失や軽減、鼻呼吸に難のある子が鼻呼吸できるようになった、というお客様の不思議な実感も同様です。
・睡眠時無呼吸症候群は300~500万人。
・鼻呼吸困難な副鼻腔炎は300万人
・鼻で呼吸できないヒトは口で呼吸できませんから、口腔乾燥症(マウスドライ)は800万人~3000万人
とも言われます。
人生の9割を過ごす室内の空気の質が、わたしたちの未来に与える影響は絶大だと、ますます確信が強くなります。
次回もひきつづき「なぜ?みな百年杉で元気になるのだろう?」を考えていきたいと思います。