『百年杉』の専門会社 加藤木材

ビニルクロスや特殊シートなどの
揮発性化学物質多用の
「高気密住宅」は悪夢と以前書いた。
揮発性化学物質のたき火住宅みたいなものである。

今回は「高断熱」について記してみたい。

北海道を除く日本列島は
世界を見渡しても類を見ないアップダウン湿度の気候である。
「世界唯一の梅雨があって雪が降る土地」なのである。

奈良の正倉院の
外部~桧構造体内~宝物が入れられた杉製の箱=唐櫃(からびつ)内
という3か所での
温度湿度を1年間計測した成瀬正和氏の研究によれば

外部における
最高湿度は100%!
最低湿度は16%!
その年較差はなんと84%にも及んだそうだ。

「学問の礎」たる欧州には
こんな気候の土地は無い。

欧州で最も乾燥する冬季のストックホルムよりも東京の方が乾燥していて
欧州で最も湿潤な夏季のローマよりも東京の方が湿度が高いのである。

「高断熱」は「乾いた寒い欧州」では実に有効な発想であるが
(というか…高断熱さえしとけばOKみたいな土地)
これだけ湿度環境が変化するこの国では
「透湿」が最優先に重要な発想になるはずである。

「透湿性を有する中での(高)断熱」ということである。

だから石油系のグラスウールやスタイロフォームなどは
この国では不向きな断熱材ではなかろうか。
断熱性能がいくら高性能であっても
湿度を通さない断熱材では
この島ではキビシイ。

構造体もそうである。
外壁側に構造用合板を張ってしまえば
構造用合板の接着剤面で湿度は遮断されてしまう。
CLTもおんなじ。

いずれも「乾いて寒い欧州」では有効なのだろうが
この島には不向きであろう。
欧州のような、梅雨なき北海道であれば有効だろうけどね。

構造躯体が透湿性を持てば
躯体自体がフィルターのようなものだから
屋内の空気は良い環境が継続する。

「それだと耐震性の強度が出ない!」
という考え方もあるだろうが

フニャフニャと崩れない豆腐のような…
揺れても崩れない免振構造体にすれば
いいことであるはずだ。

この国の建築は「耐震」、「CLT」、「ゼロエネ」…今は「高断熱」かな。
気候の違う欧州の学問を
しかもパーツのみを
そのまま持ってくるからいつもバランスが悪い。
視野が狭いのである。
木は見えても森が見えていない。

あるパーツ部分のメリットばかりを
企業と学者が一緒になって大声をあげては
法律を変えてるだけ。
全体としての底上げにつながらない。

ちなみに正倉院外気の年間84%の湿度変化の年較差も
桧の木造建築物内でのその差異はだいたい半減の43%程度になって
樹齢100年~200年の杉の唐櫃(からびつ=箱)内では
なんと75%ダウン!の年較差21%に過ぎないのである(驚)。

わたしたちはもともと海の生き物だから
体内のほとんどは水で
その生存の継続とは体内水分の保持であるのだから
温度も重要なのだけど
湿度の方が生存の継続の影響を受けやすいはずである。
この点は別にまた記すことにする。

また成瀬正和先生は
「校倉造り」という工法のおかげで
宝物が1300年間も朽ちずに保存されたという説は
はっきりと誤りであるとおしゃっていて
桧の木造構造物+杉の箱という
二重の木の箱にいれられていたからです。と断言されています。
【成瀬正和氏 文化財の保存と修復(1998年)より】

いつまでも住宅の「パーツ部分メリット」を掲げ続ける
企業+学者に聞かせたい実に痛快な解説である。

やはりこの国の宝物や人材を守るには
「断熱」も必要だが「調湿=貯湿~吸湿」が最重要なのである。

「高性能断熱効果だが湿度を通さない断熱材」よりも
「石油系断熱材よりも断熱効果は劣るが透湿性のある断熱材」ということである。

だいたい「人間の叡智」ごときが
「自然界の森の恵み」に勝るなどという
考え方がけしからん。

そんなに人間の叡智と石油製品のみで
結果を残せるのであれば
杉と桧無しで
国立博物館の収蔵庫を
石油製品とエアコンと人間の叡智とやらのみで
創ってもらいたいものである。

あっという間にこの国の宝物はカビて…
干からびてしまうという
大問題になるであろう。

未だ杉と桧のお世話にならなければ
この国の宝物の保全と継承もできないのに
人間の叡智と石油と電気で何でもできるような
口ぶりには目に余るものがある。

食べ続けて問題のある「食」に気づけば
「食」は「止めて変えればいい」のだが
「住」は30年ローンであるなら
食材の30年間の事前発注に等しいはずだ。

ヤバイ「食」とは比較にならないくらい
ヤバイ「住」はヒトを不幸にしていく。

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