『百年杉 13年間の探求』
(3)皮膚が感じる「気持ちいいもの」って?
湿気が「気持ちいい」を左右する
人は、無意識のうちに日/600mlもの水分を放出しているのだそうです。
呼吸するときに口から、また皮膚からも。
「不感蒸散(ふかんじょうさん)」と呼ばれるものです。
放出された湿気を吸収して受け止めてくれるモノは「触れて気持ちいい」のですが、受け止めてくれないモノは露を帯びてベタベタになってしまい「触れて気持ち悪い」と感じます。
ブラスチック、ビニル、ガラスなどは後者。すぐにベタベタして不快になります。
では、具体的に身のまわりにある「水分を吸ってくれて気持ちいい素材」を考えてみましょう。
人肌、紙、布、土、木
触れて~触れられて心地よい素材のうち、「人肌」以外のすべてが植物由来です。
しかも、そのすべては人類が1000年以上触れつづけてきた素材です。
土や木となると、数百万年どころか数億年以上、触れつづけてきた。
そう、数億年間、触れつづけてきて、安全が確認されている物質と言えるでしょう。
そしてこれらの物質の感触は、「触れて気持ちいい=安全が確認されている物質」として、進化の過程でわたしたちに刷り込まれていると考えられるでしょう。
現代社会で多用されているプラスチックなどの素材は、「触れて気持ち悪い=安全性未確認の物質」として、皮膚から脳にアラーム情報が伝えつづけられているとすれば、脳はその情報処理をしつづけなくてはならないということになります。
もちろん私、加藤政実の推論に過ぎませんが。
「触れて気持ちいい素材」と脳の発達・維持に関して、さらなる科学的知見の深化を待ちたいと思います。
素足でいられる「気持ちいい床」がいい
わたしたちは人生の約9割を屋内で過ごし、人生の半分くらいは自宅で過ごし、人生の3分の1は、自宅の寝室で眠っています。
そんな自宅で、足裏や皮膚を通して床に触れつづけています。
床材は常にわたしたちが触れつづける唯一の建築部材だ
と言っても過言ではありません。
とすれば、自宅の床が「気持ちいい床」になれば、未来の幸せの到達点を引き上げられると思いませんか。
杉はとても柔らかい木ですから、傷つきやすい。
しかし、守るべきものは床ではなく、家族の幸せであるはずです。
違いますか?
柔らかく傷つきやすくても、温かく艶やかで気持ちいい床であれば、「触れて気持ちいい」という情報が、「ここは安全だよ、のびのび発達できるよ」という情報が、脳に送られつづけられ、幸せが実現されていくと、私、加藤政実は思うのです。
杉は、熱伝導率が低い素材です。
つまり触れたとき、皮膚から温度をうばわない。
だからその温もりにホッとするのです。
床を杉にすれば、四季を通じて快適になります。
寒い季節でも、もちろん床暖房は不要です。
そもそも、体温よりも温度が高いモノに一定時間以上触れていると、その部分の皮膚を冷まそうとする機能が働きます。
床暖房の家で育った子どもたちの平熱はきっと低い、という疑念を私、加藤政実は持っています。
体温と免疫力は比例すると考えられていることも踏まえると、やはり床暖房には否定的にならざるをえません。
床暖房の長期使用による悪影響は、化学物質などの弊害と共通すると思われます。
新しいものに飛びつかず、超保守的に選択したいものです。
もうひとつ。
スリッパの使用も、脳への情報に弊害があるように思えます。
というのも、スリッパを履いていると無意識に足指や足裏が緊張しますよね。
すべらないよう、脱げないように。
そうしたアラーム情報が脳に送られつづけるのではないか。
とするなら、やはり素足に気持ちいい床がいい。
素足に気持ちよければ、床暖もスリッパもいりません。
次回もひきつづき、「なぜ?みな百年杉で元気になるのだろう?」を考えていきたいと思います。