『百年杉』の専門会社 加藤木材

このホワイトボードは、先項の学生さんからインタビューを受けた際に使用したモノなのですが、解説してみたい。多くのヒトには興味がない話であろうが、勝手に進めることとさせていただく。

右側の上下は「森~ヒト」を記したもので
いわゆる「川上から川下まで」というヤツですね。

今でも存在していますが、上からそれぞれの業界があって、かつては個々の業界の利益維持と発展の為に、そこから参議院全国区の議員を出して“守る”というのが続いてきたのですが、約25年ほど前に守るべきは業界ではなく消費者という決定的な考え方の転換があって(PL法制定)おのおのの業界がその業界の必要性を行政や立法府ではなく消費者に訴えなくてはならなくなっていきました。

そこでわたしも「適材適所の会」なる非営利組織を結成して「川上~川下」の横断組織を作って、思考と行動をいま一度考え直すきっかけを作ったりしました。その後、農業の6次産業化ブームが来て、政権交代もおきて、「次は森だ!」的な機運も高まっていきましたので、その時期は「わたしは農業で6次産業化で実績あるんですよ」的なコンサルさんがずいぶんとわたしの周りに現れたのですが、今は一人もいなくなって現在に至ります。
なぜ?農業と同様の6次産業化作戦がうまくいかなかったのでしょうか?…

この「川上~川下」の図には決定的な間違いがありまして
それは時間軸です。
「森林所有者~伐採」までは60年とか100年とかの歳月が必要なのです。
「伐採~製材所」までに3か月かかったとして…
「製材所~材木屋」が6か月かかったとしても…足して9か月。
バッファ見込んで1年にしましょうか。「伐採~材木屋」まで1年。

だから本当は「森林所有者~伐採」の欄は
「伐採~材木屋」の60倍~100倍の長さが無くてはならない。

そして川下の工務店になると期間はゼロ。
現在の工務店のほとんどは在庫を持ちません。
効率的経営というヤツです。

柱を60本使って家を建てるとしても
60本は施主との契約後に発注されて、納品も早くてもダメ、遅くてもダメ。
「早く納品されても置く場所を持たないから、着工現場に入れてください。すぐに組んで使える状態の加工済みの柱60本を入れてください。59本でも61本でもダメです。使えない柱もダメです。使える柱ばかり60本を入れてください。あと…高品質の素晴らしい柱もいりません。もし、高強度やその美しさにおける高品質の柱などの価値ある柱が混ざっていても、価格はそうではない…安価に使える柱の価格しかお支払いできません。以上よろしくお願いします。」

これでどうやって山にお金が還ると言うのでしょう。
納期100年とまでは言いませんが…山は収奪され続けて疲弊していくのは当然です。
発注がある100年前からお金も汗をつぎ込み続けていくのですからね。

こういえば工務店が悪者のように感じてしまうかもしれないけど
こういう工務店の手法を誘導しているのは
ほかならぬ、わたしたち消費者のワカランポンチンぶりなのです。

「早く安く効率的に…」

今のほとんどの工務店は消費者…施主というモンスターに取り込まれています。
「早く安く」と言った瞬間にウソになります。

「早く」すれば、環境に大きな負荷を掛け
さらにはヒトを摩耗させて、人権を蹂躙するのです。

「早ければ高価になるのが道理であり、安くするには時間をかけなければならない。」
はずなのです。

また事前に「買えない」のはお客さんが
「杉じゃないどころか木じゃなくてもイイ…」とか、質を下げ過ぎて
空気を悪くして、家族の呼吸を浅くしていって…家族が幸せになれない“住まい”になる選択にあわせちゃっているからです。

事前に杉を買っておいても「価値ある杉をいらない」というお客がたくさん来ちゃうから買っておかない。そんなお客の仕事なんて断ればいいのにね。
断らずにこどもの呼吸を浅くしていって…未来を奪っていく…不幸を広げていく。

だから麻婆豆腐の注文が入ってから
豆腐を走って買いに行って
「高く良い豆腐はいらない。安価な、ソコソコの豆腐を早く頂戴!」と言う
中華料理屋さんのようなのが今の工務店。
カッコ悪いというか、品格が無い。
自信のある素材を事前に買っておかない料理屋なんかにいきたくないでしょ。
オーダーするたびに勝手口から走って出ていくお店ですよ。

やりたいのは
植物の恩恵によって幸せなヒトを増やす事ではなく
設計という業務や施工という業務じたいがしたいのですからね。
予算が無くても、無理やりビニルハウスのような住宅を作ってしまって不幸を広げていく。

結果、こどもたちは成長できずに苦しんで
おそらくもう【100年杉】のような価値ある高品質の杉材の収穫の為の
育林など、どんな森林所有者もしないどころか
このままでは「山の畑」という行為自体も放棄されかねないのではないでしょうか。

ハウスメーカーや工務店にまかせっきりだと
国も森も滅ぶのである。

具体的な対案としては
「住まい」における「森の恵み」を工務店から引き離すことではないだろうか。
木だけを売りたがる材木屋にも、これを機会に早く絶滅してもらって
木は気ですから、「木のこころ」を売る材木屋に新たに登場してもらって
「木のこころ」の材木屋さんから、みな、木材は用立ててもらうようにするのだ。
工務店さんは工務をするのみに専念してもらう。

「ほかを当たってください。あなたの依頼は引き受けたくありません。そんな家を建てちゃったら、あなたが自分のお金で自分の家族を不幸にするようなもんだよ。嫌だよ、わたしは。お客さんが不幸になる家を造るなんて…。最低限、床は木。壁もビニルの家はダメだよ。うちはそういう家しか造らないんだ。」

そういう工務店を応援すべき。

そういう意味ではビニルクロスの施工は「踏み絵」としてわかりやすいので
工務店の哲学をはかる大きな目安となるであろう。

やはり望まれるプロとは
施主に向かって哲学を披露し続けるプロである材木屋=植物屋であって
「あなたに売る杉は無い!」くらいの愛と誇りが欲しいものである。
100年の時間軸と植物のかけがえの無さを
愚直に言い続けて、一歩も引かない哲学を有するプロである。
ちゃんと、たっぷりと山に報酬を還していく最前線としての誇りも宿る植物人。

「わたしが引いていては、山にお金が還らない。還らなければ、すでに天に召された先人にも顔向けできない!ワカランポンチンに売る木は無い。」

ワカランポンチンの顧客満足度100%を目指す工務店とは真逆のスタンス。
ワカランポンチンの顧客の賢さ指数を植物を通じて引き上げて
賢い市民を増やしていきながら、その道は世界平和へと続く感じ。

イメージすると、やはり女性のような気がする。
女性の森とヒトをつなぐ「こころの材木屋さん」
そういう人間の出現を待ちたいし応援していきたい。

副業でいいので、関東で30人くらいいれば
世の中は変わるのではないだろうか。

有限会社 加藤木材
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